女子

心安らぐお話

卒業生  島崎 ひかり

最近は気温の高い日々が続き、夏の訪れを感じる頃になりました。

こんにちは、文学部2年の島崎ひかりです。

オンライン授業が始まり3週間目を迎えていますが、学問へのモチベーションがなかなか上げられずにいます。皆様はいかがお過ごしでしょうか。

本ブログを書くにあたり、何を書こうかと考え、たまにはバレーボールと全く関係のない話もしてみようと思いました。私の趣味の領域となりますがお付き合い頂けましたら幸いです。弊部には私含めて2人の文学部学生が所属しております。義塾の文学部は2年生から専攻がわかれ、1年生の総合的学習からより専門的な学習へとシフトチェンジしていく仕組みです。
私は哲学科の美学美術史学専攻に進級させて頂きました。

そこでひとつ、皆様に美術のお話をさせて頂きたいと思います。
単に美術の話と言っても、美術史の流れや芸術思想について書くだけでしたらこのブログを閉じてしまう方も多いと思われますので、ある画家のちょっと素敵なエピソードをお話します。

まず初めに、芸術作品といえば「エピソード」というものがつきものです。
なぜかと言いますと、芸術作品には必ず画家の思想が盛り込まれており、誰に向けられて作られたのか、誰がそれを買ったのか、なぜ画家はこれを作ったのかなど、様々なバックグラウンドを経てその完成に至るからです。(当たり前と言ってしまえば当たり前ですね。)
美術品を見てもあまり良さが感じられないと言う人も多いかと思われますが、その作品が語る小さな映画のようなお話を覗いて見てはいかがでしょうか。

その中でも私が気に入っている、エドゥアール・マネの作品『アスパラガス』についてのエピソードをご紹介します。

この『アスパラガス』という作品は至ってシンプルで、机の上に1本だけ置かれているアスパラガスが、画面中央より少し下に描かれています。カンヴァスの大きさも16.9×21.9cmと、決して大きいものではありません。調べていただけるとお分かりでしょうが、インパクトにはかける素朴な絵画です。

これだけ見ても「ただのアスパラガスではないか」と思うのが普通でしょう。
しかしこの1本のアスパラガスの絵には、描かれた理由とマネが届けたかった送り主がいます。

本作品に先立ち、マネは一束のアスパラガスを描いた静物画を800フランの値をつけて売却しました。しかし買い主であったアートコレクターのシャルル・エフリュシ氏は大変その絵を気に入り、1000フランの値をつけてマネに報酬を送ってくれたのです。その心遣いに感動したマネは、この1本だけ描かれたアスパラガスの作品を制作しました。そして「先日あなたにお届けしたアスパラガスの束から、1本だけ抜け落ちていました。」という言葉を添えて、本作をエフリュシ氏に贈ったそうです。その後も晩年のマネは、しばしば小さな静物画を親しい人々への贈り物として描きました。

たったこれだけのエピソードですが、このお話を知っているのと知っていないのとでは作品の魅力が全く違ってきますよね。これも芸術鑑賞における楽しみのひとつです。

さて、長々と語ってしまいましたがいかがだったでしょうか。私たちは現代を生きる者ではありますが、昔を生きた人々のエピソードから癒しを得ることもできます。新型コロナウイルスで大変な時だからこそ、エフリュシ氏とマネの相手を思いやる心やリスペクトの精神が心を揺さぶることもあるでしょう。

私もこの自粛期間で少し落ち込んでしまったり、やるせない気持ちになることが多々あります。そんな中でも何か心を落ち着かせるようなお話や映画、小説に出会えるとまだまだ頑張れるようなことがあると感じます。皆様にも心安らぐ時間があることを願いながら、本日のブログとさせて頂きました。

長文乱文ではございましたが、最後までお付き合い頂きありがとうございます。皆様もお身体にはお気をつけて、こんな時だからこそ素敵な毎日をお過ごしください。

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