男子

夢叶へよ

文学部4年  山木 柊

日頃よりお世話になっております。今年度主務を務めました、文学部4年の山木柊と申します。
木枯らしが吹く頃となりましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。

12月16日の納会をもちまして慶應義塾体育会バレーボール部を引退しました。
引退するまでは、「年末は卒論に大学院への出願準備で忙しくて、感傷に浸っている時間なんかないだろうな」と思っておりましたが、実際に引退してみると、卒論と進路に支障が出るほど感傷に浸ってしまい、納会後の数日間は後輩からもらったメッセージカードと試合中の写真を見るのに費やしてしまいました。
現役の頃は当たり前の存在だった後輩たちも、記念館も、部室も、練習前後になんでもないおしゃべりをするあの時間も、外から見るとこんなにも美しく、羨ましいものなのですね。
メッセージをくれたみんな、改めてありがとう。そして会場にお越しいただき、写真を撮ってくださった塾バレー部ファンの皆様、(特にインハオとくるみさん)4年間ありがとうございました。

さて、今回は私が執筆する最後の活動日誌となりました。
自分の考えを全世界に発信することがなんとも照れくさく、これまで活動日誌の執筆は実はあまり好きではありませんでした。自分に活動日誌の担当が回ってくるたびに歩奈(河村・経4)には「日誌の更新週一本でよくない?さすがに週三本は多くない?」と文句を言ったものです。
しかし、いざ最後となるといい文章を書かねばと力が入ってしまいます。

これまでの活動日誌を通して、自分が大切にしていること、活動を通しての気づきについて皆様に共有させていただきました。今まで私の拙い文章を読んでくださった皆様には感謝申し上げます。
今回の活動日誌では、10年間バレーボールと共に歩んだ慶應義塾での生活について書かせて頂こうと思います。
長文となってしまい恐縮ですが、最後までお読みいただけますと幸いです。

【きっかけ】
私がバレーボールを始めるきっかけとなったのは慶應義塾中等部です。
新しい環境へのワクワクと、友達ができるかなという不安が入り混じる中、出席番号順で席の近かった子と部活動見学を回ることになり、そこで出会ったのがバレーボール部でした。私もその友達も新しいスポーツをやってみたいと思っていて、顧問の先生からも「人数が少ないから試合に出やすいよ」と言われたこともあり、1年B組24番の山木柊は1年B組25番の山元康生(法4)と一緒に入部を決めました。
私はこの時、バレーボールと一生の仲間に出会いました。
中等部での3年間は10年間のバレーボール生活の中で最も人として成長できた時間で、もしこの時間がなければ、私は全く違う人間になっていたことと思います。
そんな中等部バレー部には感謝しかありません。顧問の皆様、コーチの皆様ありがとうございました。

高校生活を過ごしたSFCも、大学でバレーボールを続けることを決めた大きなきっかけです。
SFCは中学に男子バレーボール部はなく、高校のバレー部はほとんどが未経験者で構成されていたため、平たく言うと弱小校だったと思います。それでも、試合会場の誰よりもバレーボールが大好きなSFCバレー部のことが、私は大好きでした。

何より、毎週のように強豪校との練習試合を組んでくださった山下さん、部の中でも1番のバレーバカだった久保田(商4)。この2人がいなければ、私はこんなにバレーボールが好きになることはなく、大学で体育会に入るという選択はしていなかったと思います。
私にバレーボールを愛させてくれてありがとう。

そして今野さん。今野さんからいただいた「夢叶へよ」の言葉の通り、感謝とともに目標のために進んできました。

【苦しんだ体育会での生活】
「お前大学でもやるっしょ?」「もちろん」という軽いノリで久保田と一緒に塾バレー部の門を叩きましたが、ここから始まった4年間は苦しいことの連続でした。

自分の実力不足に苦しんだ1年生。将来を見据えた選択肢との間で葛藤した2年生。副務になり、慣れない仕事に悶えた3年生。主務、選手、学業の三刀流を貫き通せなかった4年生。

1年生の時は、自分の実力不足を見せつけられて、練習に行くことも怖くて、いっそ自分の体なんて壊れてしまえと思っては自分の心の弱さを責めました。誰にも相談できず、自分の悩みが誰かにバレてしまうことすら怖かった。

2年生の時は、周りが資格の勉強や留学に行く中、自分はバレーボールしかしていないことに焦りを感じ、将来のために何もできていない自分が好きになれませんでした。むしろ大嫌いでした。

3年生の時に、スタッフの仕事という今まで見たことのない世界に足を踏み入れ、自分は何のためにこんなことをやっているんだと、意味を探しても見つけることができない中で残酷に時間だけが過ぎていきました。

4年生は、選手として、主務として、大学院進学を目指す身として、全てをやり切れるかという勝負に挑みましたが、挫折しました。7月6日に選手を引退し、この時私は人生で初めて挫折を経験しました。
人生初の挫折なんて言うと「楽で順風満帆な人生を送ってきたんだ」と思われる方もいるかもしれませんが、もちろん私はなんでもできるような優秀な人間ではないし、失敗だってたくさん経験してきました。「慶應義塾体育会バレーボール部選手兼主務」という結果の裏に、楽しいことなんて一つもありません。
ただ、自分の無力さをどれだけ痛感させられようと、どれだけ失敗をしても、これまでの人生で一度として「自分にはできない」と思ったことはありませんでした。
「自分ならできる」「自分にしかできない」と信じ続け、逃げずにやってきた結果が「慶應義塾体育会バレーボール部選手兼主務」でした。
だからこそ、自分で選んだ道を自ら閉ざすことは本当に苦しく、悔しいものでした。

こんな苦しい4年間を乗り越えることができたのは、支えてくれた家族のおかげであり、私を気にかけて声をかけてくれたり遊びに連れて行ってくれたりした先輩のおかげであり、こんな私の背中を追ってくれた後輩のおかげであり、どんな時も「踏ん張れよ!」と声をかけ、味方でいてくれた自分自身のおかげであり、そして何より私の心の光であり続けた同期のおかげです。
本当にありがとう。

バレー部を引退した今、自分がしてきた選択は正しかったかという問いに、まだ答えは出せていません。
これまで捨ててきた選択肢を弔い、自分が選んだ道を正解にする旅はこれからも続きます。
ただ、私は自分が選んだ道の中で苦しむことができて、その道を歩き抜くことができて良かったと心から思います。

最後に、私は面と向かって人に感謝を伝えるのは、照れてしまって下手なので、この場をお借りしようと思います。
ここまで長文お付き合いいただきありがとうございました。

両親
中等部の二次試験の面接で、お父さんが語りたすぎて聞かれていないことまで答えてしまったあの時、お母さんが「10年間の慶應義塾の一貫教育に何を望みますか?」という良い質問に「とりあえず友達をたくさん作ってもらってー、まあそんな感じで(笑)」と答えたあの時、私は不合格を確信したものですが、なぜかここまで来ることができました。そして、たくさんはできなかったけど、いい仲間に出会うことができました。
慶應に入ることができて、10年間もバレーボールができて、その中でみんなから信頼してもらえたのは2人のおかげです。
中学受験、慶應での10年間、大学院受験と僕を導きながら支えてくれてありがとう。
僕がいる前でこれを読んでる可能性が高いから今日はこの辺にしときます。

星谷さん
星谷さんとは、部の仕事の話をし始めると止まらなくなってしまい、最終的には日本の将来について語るほどでしたね。
星谷さんは我を持っていない人の目には、頑固で言い始めたら聞かない人に映るかもしれません。実際、自我を出せていなかった下級生の頃は私もそんな認識でした。
ですが、自分は監督と同じ視座で部を見なければならないと自覚してからは、自我を出すことができたし、星谷さんにはたくさん受け止めていただきました。私と対等に部の方向性について話し合ってくれて嬉しかったです。ありがとうございました。
星谷さんは最後の集合で、「みんなに伝えてきたこと、やろうしてきたことはすぐ実るものではない。もしかしたら実らないことだったかもしれない」と仰っていましたが、安心してください。僕が実ります。

先輩の皆様
実績も経験もない私を部に迎えてくれてありがとうございました。皆さんに認めてもらいたくてここまで頑張れました。自分が退部ではなく、こうした形で引退できたのは皆さんの存在なしにはありえないことでした。
そして皆さんのおかげで高いレベルでプレーすることができて、バレーボールの奥深さに気づくことができて幸せでした。皆さんとバレーボールをした時間は、何より誇らしい宝物です。

後輩たち
納会では、「言いたいことは活動日誌に書いておくので見てください」って言ったけど、あれはただ言うことを考えてなかっただけです。許してください。
チーム山元が始まる前、4年生が入来以外ほとんど試合に出ていないからみんなついてきてくれないんじゃないか。結局実力がある人の言うことしか聞いてくれないんじゃないかと心配していたけど、みんなを侮り過ぎていたみたいです。この1年、こんな4年生についてきてくれてありがとう。
そして最後の全日本インカレでは、僕たちを大田区総合体育館まで連れて行ってくれてありがとう。プレーするみんなも、応援するみんなも最高にカッコよかったよ。
中京に負けて早稲田とやれなかったことは悔しかったけど、あの悔しさは忘れないでね。あの時の気持ちからも、目の前で引退していく4年生からも目を逸らさずにまっすぐ向き合ってほしい。アマチュアの世界でこれだけハイレベルで、本気でバレーボールができるのは大学バレーしかないから、残された時間を精一杯過ごしてね。もう二度とあの舞台には戻れない先輩からのお願いです。
最後に航大(林・商3)
この1年隣で走ってくれてありがとう。航大は本当に意欲的に仕事を覚えようとしてくれて、すぐ「今日他になんかやることないっすか」って言ってくるから、「逆にそんなのにやらせていいのかな」って思うこともあったよ。練習とか仕事以外のところでも遊んだり、いろんな話ができて楽しかった。最後の方はなんだかんだ誰よりも航大に色々相談してたかもしれない。主務に就任してすぐでだいぶ忙しそうだけど、仕事のことは航大ならたぶん大丈夫だと思う。

僕はいつまでもみんなの先輩だから、困ったら頼ってね。
みんなのことだから来年以降のことは何も心配してません。
強く優しくあれ!

歩奈
3年生になってからスタッフを経験して思ったけど、4年間スタッフ一本でやったのは本当にすごいと思う。
裏方としての仕事をいくらしても自分は輝かないし、他にご褒美があるわけでもないし、やりがいだけでは乗り切れない時も多かったんじゃないかな。「なんでこんなやつらを輝かせるためにこんな思いしなきゃいけないんだ」って思うこともあったと思うけど、4年間バレー部をカッコよくしてくれてありがとう。
スタッフとしてはポッと出の僕だったけど、歩奈から上から目線で何か言われることもなかったし、むしろ頼ってくれたのは嬉しかった。
ありがとう。

入来
入来は1年生のとき本当に「なんだこいつ」って思ってたけど、だんだん実は優しいやつってことに気づいてった。バレーボールで見たらザコの僕からイジられてもキレないし、見た目の割には意外と接しやすかったよ。
お前には「なんだお前」としか言ったことないし、お前からは「なんや貴様」としか言われたことない気がするけど、言葉よりも心で会話できてたような気がする。
だから試合中にお前の気持ちをアゲるのは俺の役割だと思ってたし、早慶戦でお前が攣りそうだったときは「代わりは俺しかいない」って思ってた。試合後に、負傷交代したのに晴々とした顔をしたお前を見れてよかった。早慶戦運営やってよかったよ。

一木
アナリストお疲れさま。アナリストは選手みたいに直接戦うわけじゃないから、モチベーションとか色々難しいポジションだと思う。それでも選手以上の闘志を燃やしながら、試合の分析と戦術を作る姿はカッコよかったよ。この4年間でたくさん身を削ってくれてありがとう。この1年間、誰よりも近くで試合中の一木を見てきたけど、指示は的確だし、相手の動きにすぐ対応できるし、次のコンビ当てれちゃう一木に憧れてた。
このチームは何より一木の情熱に支えられてた部分が大きいと思う。チームの頭脳であり、火付け役であってくれてありがとう。

のしん(平山・商4)
褒めると調子に乗るからあんまり褒めたくはないんだけど、のしんには本当にお世話になった。2年の冬、やめるかどうかの瀬戸際の時、境遇が似ているお前にしか相談できなかったけど、境遇が似てる人がお前で本当に良かった。
バレーボールでは、俺もお前もベンチに入るか入らないかみたいな微妙なポジションにいる時間が長かったから、のしんの痛みがわかるだけに、その上で家に帰ったら1人なのは辛いだろうなぁって思ってた。だから東京の家族になってあげたかったんだけど、どうだったかな笑。ちょっと力不足だったかもしれないけど。
4年間たくさん笑わせてくれてありがとう。

久保田
中等部の時はほぼ他人だったから7年間ありがとう。
久保田がいなかったらバレーボールは好きになってないし、大学ではサークルで満足してたかな。バレー好きすぎるし、メキメキ上手くなっていくし、久保田とバレーボールをするのはあまりにも楽しすぎた。
徒歩移動が15分超えると不機嫌になるくらいガキンチョだけど、面白いし、誰からも可愛がられる久保田は、弟がいたらこんな感じかなと思ってた。頼むからあんまり大人になりすぎないでくれ。

康生
一旦10年間ありがとう。
キャプテンになることが決まってから、「どんな風に振る舞ったらいいかな」とか「みんなの前でうまく喋るためにどうしたらいいかな」とか不安を口にしてたけど、あれは何だったんですか?普通にできるなら聞いてくんな。
康生は根本的に優しいし、人の意見をしっかり聞くから割とナヨナヨしてると思ってたけど、今年は殻を破ったね。「上手くいかなかったら責任取るから、最後は俺が決めるんだ」っていう胆力もあったし、誰かにとっては不利益になるような決断もできたし、誰かの不満を背負う覚悟も決まってたね。
1年間本当にお疲れさま。

自分へ
4年間お疲れさま。ありがとう。

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