男子

ボランチ

文学部4年  山本 昌岳

日頃より大変お世話になっております。
文学部4年、学連委員の山本です。

汗ばむような暑さの日が段々と増えて参りましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

今回のテーマは「ボランチ」です。春季リーグ戦の只中で、他の部員は大会にかける熱い想いを活動日誌にこめている中で図々しくも全く無関係のテーマとなってしまいましたが、この文章は、もうすぐ社会人になることに対する不安の中で、自分を見失わないために私なりに今後についてまとめたものと思っていただければ幸いです。長々と続きますが、どうかお付き合いください。

まずはボランチとはなんぞやというところですが、ボランチとはサッカーにおけるポジションの事でありまして、私がサッカーを観戦する中でも最も好きなポジションでございます。また、小学生の頃に私が務めていたポジションでもあります。
そもそもサッカーはバレーと違い、GKの例外を除いてルールによって定められているポジションは存在しておりません。従って極論を言えば、実は全員DFだろうと、全員FWだろうと何も問題ないのです。
しかしながら、定められていないからこそチームや選手毎に自由な戦術やフォーメーションを選択することができるため、サッカーには多種多様なポジションが存在しているのです。
さて、私はポジションには厳密に言うと2つの意味が包含されていると考えております。つまりは「立ち位置」と「タスク」です。バレーボールで例えるならばレフトは「立ち位置」であり、OHは「タスク」と言えますね。
サッカーも同様でして、ボランチとは中盤の底でディフェンダーの前に位置する、守備的ミッドフィルダーのポジションのことを指します。語源を辿るとポルトガル語で「ハンドル」を意味する言葉が由来でして、文字通りチームの「舵取り」を担う重要な役割を担っているのがボランチです。ポジションの意味として、「立ち位置」で言えばピッチ中央からやや後ろ気味、「タスク」で言えば舵取りと言うことができます。

ボランチは攻守のおいての要であり、総合的なタスクを高次元でをこなすことが求められるため、非常に難しいポジションであり、その特徴故に優秀なボランチの選手は時に「司令塔」「皇帝」などの二つ名をつけられることもしばしばあります。
その中でも私がとりわけ好きなボランチの選手として、中村憲剛という人を挙げさせていただきます。川崎フロンターレのバンディエラであり、A代表でも長く活躍されて、現在は解説などでもお馴染みの中村選手ですが、とあるYouTubeの動画に出演し、理想のボランチ像について語っていたことが非常に印象に残っておりますので、この場で簡単にご紹介いたします。

・攻守において全てのことができる
・戦局の潮目を読んで試合をコントロールすることができる
・言語化ができる

これらがボランチというポジションでチームの舵取りを担う人間に求められるタスクであると、日本屈指のボランチである中村選手は語ったのです。

ここで、少し話を変えて、サッカーにおけるボランチとバレーボールにおけるセッターを比較してみたいと思います。というのも私は、セッターとボランチはほとんど同じだと考えているのです。
第1に、セッターのタスクはトスをセットすることでありますが、セッティングには非常に複雑な要素が絡んでいます。味方の守備はトスの質に直結しますし、そのトスの質が味方の攻撃の質に直結する。つまりシームレスに見えるバレーボールのラリーを分節化した時、セッティングという要素は攻守両面において最も重要と言えます。また、トスというプレーの根幹はアンダーやオーバーの基礎技術そのものです。トスの精度を上げるためには高レベルな基礎技術の習得が不可欠であり、その基礎技術は往々にしてトスのみならずあらゆるプレーの技術向上を促します。セッターが総じてレシーブ力も兼ね備えていることが多いのは、ここに根拠があるのではないでしょうか。
そして、セッターが高い攻撃力を有すると、ツーアタックを筆頭にチームの攻撃の幅や厚みが広がることは明瞭です。従って、攻守において高次元なスキルを持つセッターは優秀と言えます。
第2に、セッターの個性はセッティングの配球に大きく表れると言えるでしょう。ここで2つ目の、戦局の潮目を読むスキルが求められます。バレーボールは個人戦術の要素が大きい競技であることは間違いありませんが、その中でもチーム戦術のイニシアチブの奪い合いは、間違いなくセッターが担っていると言えます。あるいは、戦局を適切に把握した上でセッティングを構築する能力が高いセッターを有するチームは強い傾向があるでしょう。
第3に、セッターは誰よりも言語化の能力が求められるポジションであります。セッターが言語化の能力を高めることで、大きく2つのメリットを得ることができると私は考えております。1つは仲間に対してより高い解像度でイメージを共有することが可能になること。イメージの共有がより上手く行っているチームほど、チーム戦術の練度が増すことは言うまでもなく、先ほど述べたようにチーム戦術の中核を担っているセッターの言語化能力は最も求められるということは言うまでもありません。2つ目は、日頃から細かい現象に対して言語化を行う訓練をすることで、ロジカルシンキングの技術が向上することだと考えております。目の前の事象を言語化することは、原因と結果の因果関係の分析や改善策などの考察などを能動的に行うことに直結しています。ですから、言語化能力が高い人間ほど、戦況の分析に長けることに繋がると言えるのです。数秒から数十秒のブレイクで即時的な戦略の修正や改善を行うバレーボールにおいて、コートレベルで戦局を分析、言語化を行うことが可能なセッターは非常に優秀であると言えるのです。

ボランチもセッターも、基本的にはチームの得点、あるいは失点に直接関与することはありません。サッカーにおいては、得点を決めることが多いのはFWの選手ですし、失点を防ぐのはDFでありGKです。形は違えどバレーにおいても同様でしょう。しかしながら同時に、チーム全体として試合における勝敗のファクターを最も握っているのもボランチでありセッターだと思います。私は選手時代の6年間セッターをしてきましたが、このポジションの面白さの本質はまさにこの部分に感じていましたし、だからこそサッカーにおいてもボランチというポジションで活躍する選手に惹かれているのです。

私は、”ボランチ的な”ポジションで活躍することが好きです。この事実は、学連で働いてきて初めて自覚した私の好みですが、改めて思い返せば小学生の頃も中高時代も、ずっと私は根本が全く同じことに楽しみを見出してきたということに、最近になってようやく気づきました。だからこそ、学生生活が終幕を迎えて社会に出てからも、ずっと同じようなポジションを楽しみながら生きていきたいと強く思っております。ここ数ヶ月間は、いずれ迎える社会人生活という先の見えない世界に対しての不安が常に付き纏ってきましたが、ボランチについてまとめた今回の内容を強く心の中の軸に持って、さらに努力を重ねたいと思います。

最後になりましたが、春季リーグのクライマックスが近づいて参りました。現在塾バレー部が厳しい状況に置かれていることは皆様もご承知いただいているかと存じます。このような状況で、私がチームに対してあまりにも貢献できる事が少ないことはとても歯痒く、そして心苦しいですが、それでもチーム渡邊の一員として精一杯全力を尽くして活動をして参りますので、何卒応援のほどよろしくお願い申し上げます。
それではどうかご自愛くださいませ。ぜひ、試合会場でお待ちしております。

“ボランチ” への1件のコメント

  1. 大昭叔父 より:

    山本さん、サッカーにおけるボランチとバレーボールにおけるセッターの役割についてよく解りました。厳しい試合が続いていますがプレーを皆さんで楽しんでください。応援します!

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